Adfest審査員経験報告
数週間前にAsia Pacific Adfest 2007という、タイのパタヤで開かれた広告祭のCyber部門審査員として行かせてもらった経験について書きます(結果はこちら)。
そもそも自分の事を棚にあげて、仮にも人様の作品の良し悪しについてジャッジしなければならないという難しい立場に今まで立ったことがないので、お前行って来いといわれたとき本当に自分でよいのか非常に不安でした(今でもとても不安です)。自分は会社ではどちらかというとコードを書いているのがメインの人間で、広告のなんたるかなど語れる立場に全くないのですが、インタラクティブコンテンツを手を動かして作る人間の立場から、またいち素人の立場からやらせてもらおうと思い行ってきました。
各部門の審査員は5人で、Cyber部門の審査委員長は、The Barbarian GroupのFounderの一人のBenjamin Palmerさんでした。Barbarianは近年もWikipediaに熱い記述がされるようなキャンペーンコンテンツを作ったりして活躍してますが、自分が2000年代初頭にカナダの制作会社で働いていたころから既に同業の人間からは熱い会社として知られていました。 因みにCo-FounderであるRobert HodginさんもFlight404というサイトで当時から中村勇吾さんと同様にヒーロー的な存在だったように覚えています。そのほか、中国からYanyanさん、オーストラリアからMattさん、シンガポールからKineticのJasonさんと、国際色豊かで、とてもフランクな審査員の方々と一緒に審査ができたことは良い経験になりました。
聞いたところによるとCyber部門の応募作は300点近く(内ウェブサイトは約200点)、そのうちの80%近くが日本からの応募だったそうです。審査は2日間に渡って行われ、1日目の1次審査でファイナリストを決定し、2日目の2時審査でファイナリストの中からメダルを決定する、といった段取り(になる予定でしたが、結局毎日時間をオーバーしながら3日掛かった)でした。 この段取りだと、1日目で300作品を全て審査しなくてはならず、単純計算すると1作品1分だとしても5時間、10分掛けるとすると50時間掛かります。また、作品の審査は、審査員5人全員が椅子に座った状態で、基本オペレータのお兄さんが作品を次へ次へと見せてくれるという形でした(結局審査が進むにつれ審査員がお兄さんからマウスを強奪する機会が増えていきました)。
上記のような制約(作品を見る時間はごく限られている/作品に常に「触れられる」わけではない)中、1次審査は非常に速いペースで行われました。基本審査はPDAデバイスを渡され、「これ以上見たい」作品についてはIN、「もう見たくない」作品についてはOUT、また、審査を棄権する場合(自分の会社が関わっている作品については棄権しなくてはなりません)はABSTAINのボタンを押すだけ、という形式なのですが、短い時間でINかOUTかを判断するのは至難でした(実際の話、こんな短い時間では全部INにしたいのが人情ですが、そうもいきません)。 応募作品の8割が日本からという都合上、応募作は自分が過去に一度少なくとも見ているものが多かったのですが、それでも判断に非常に苦しみました。
こうして、審査員5人のうち過半数がINを入れた作品がファイナリストになるわけですが、Adfestのような審査形式の場合、1次審査で重要なのは短時間、ぱっと見で理解される「分かりやすさ」であり、当然ながら長編もの、ターゲットがセグメントされているもの、文化的な背景やコンテクストを知っていないと理解できないものは不利です。この辺りをきちんと拾って評価できる仕組みというものは存在するのか、そもそも広告賞というのはそういうものなのか、といったところは難しいなと感じました。
バスキュールにおいて昨年最も気合が入っていた最大の仕事であるポケモンのマルチユーザーコンテンツもあっさり一次審査で落とされました(あまり広告に見えない/現物がすでに終了していて無い/ポケモンファンでないとなかなか良さが分からない=ターゲットが完全にセグメントされている)。 審査員の一人としてこういった成り行きを目の当たりにすると歯がゆくはありましたが、この審査方式では仕方がありません。他の多くの作品も同様の憂き目を見ただろうであることは想像に難くなく、自分も間違いなく多くの作品の素晴らしい部分を見過ごしてしまったのだと思います。
唯、ここで強調しておきたいことは自分はともかく、少なくとも自分の周りの審査員は全員、限られた時間の中全ての作品に対して、誠実に審査をしようという心意気があったということです。URLをタイプしたところ見られない作品でもURLをこうし たらどうだとか、とにかくなんとかできないか皆でかなりしつこく試しました。また、言葉が分からない部分は、各国の審査員がその語学力を生かしてなんとか全員で理解しようと試みたり、挙句の果てには議論の結果「この作品はこの部門では厳しいが、この部門なら十二分に賞に値するだろう」といった流れで、応募作のカテゴリーを移すといったことにもオープンでした。その分審査がより大変になったことは否めませんが、このことが結果としてCyber部門の受賞作の数、および賞全体のクオリティーを上げる結果となりました。掟破りなのかもしれませんが、これは審査委員長Benjaminさんの非常に良い意味での熱さ/人間くささによるところが大きく、またCannesなどの他のもっと大きな広告賞より規模が小さいAdfestだからこそ(?)起こりえた良い動きだったのではないかと個人的に考えています。
過去の幾つかの広告賞の結果を見て、また、こうして実際にひとつの広告賞の審査をやらせてもらって改めて感じたのは、「賞をとりやすい作品、とりにくい作品」というのは存在し、賞をとりにくい作品は、プレゼンテーションを相当工夫しなくては難しいといったことです。長い、あるいは全貌を理解するのに時間のかかる作品については、ダイジェストビデオを用意するのが良いのではないかと思います。しかもその中に実際のユーザーさんの反応がわかるような部分が入っていると、もっと良いのではないかと思います。今回Cyber部門でグランプリをとったBig Shadowは、その作品自体の魅力や完成度もさることながら、渋谷に現れた巨大な影に対する道行く人々の反応が、YouTubeにあげられていたこのビデオで見られたことはインパクトとして非常に大きかったのではないかと思いました。また作る側としても、実際に自分の作ったものを見るひと、触れるひとの表情を思い浮かべながら作るというのはやはり大事だな、とつくづく感じました。仕事に必死になっているときは忘れがちなシンプルなことを思い出す良い機会になったのではないかと思います。
※この文章を書いている途中、審査に参加させてもらった以上自分の審査基準はどうだったのかについて書かないのはどうなんだろうという思いがあり何度もトライしたのですが、どうしても自分の文章力では考えていることをすっきりまとめられず、今回は挫折しました。一応、インタラクティブアート展示会でもFWAでもない広告賞の審査員をやらせてもらった以上は、素人なりに良い広告とはなんだろうと考えてはみたのですが、これについては時間のあるときにまた書かせて貰いたいと思っています。
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