独立系Web制作会社の存在意義
「3年後には会社がない可能性も十分にありうるけど、それでも大丈夫?」バスキュールに面接に来てくれた人につい確認してしまう言葉だ。せっかく入社しようとしてくれている初対面の人にこんなことを尋ねては、無駄に不安にさせたり、変な言質をとられたと勘ぐられるだけだから言わないようにしようと思いながらも、一生懸命に話してくれる姿を見ていると、その可能性に触れないでいることの方が悪い気がしてつい言ってしまうのだ。我慢できない理由は、独立系のWeb制作会社がどうなっていくのかボクにはみえていないからだ。言い換えれば、うちにきてくれる人はじめ、Web制作者がどうなっていくのか見えていない。恥ずかしい話だが本当のことだ。
8年前にボクが在籍していたCG会社は、受託制作は絶対にしないという独自の方向性を打ち出し、まさに世界を目指していた。大企業をスポンサーをつけハリウッド映画をつくるための共同会社を興すところまでいったが、計画が頓挫し、失敗してしまった。現在は、受託をメインに堅実路線でやっているようだ。当時から賛否両論あったが、会社の選択が間違っていたかと思うとボクはそう思わない。それは今のCG業界の現実が表している。今のCG業界の姿がみえていたから、受託を拒否し、チャレンジしたのだ。今後、独立系のCG制作会社が世界規模の映画をつくる計画を興し、実際に多額の金銭を動かすことはもうないのではないかと思う。
ただ当時、会社に在籍して感じていたのは、CG表現の可能性や面白さを伝える小作品は作れるが、それ以上のものをつくろうとすると、作家といえる人がいなかった。監督に限らず、コンテンツそのものを作れる人が不在だった。もちろん社内にすべてを抱える必要はないが、横のつながりのあるプロデューサーも、他業界の作家とつながりのあるCGクリエイターもいなかった。だから、作家は外から手配するしかなかった。その選定にも現場の人間が関わることも無かったため、現場のリソースは、事実上その作家の手にゆだねられ、コンテンツの中身に対する衝突もなく、開発陣は淡々とオペレーティングしていく。少々極端に書いてしまったけれど、きっと他のCG制作会社、例えば受託のCM制作の現場ではこれに近い作業が行われていたのではないかと思う。そして現場のCGクリエイターもオペレートするだけなら、機材も安くなったし、フリーとして活動する人が増えていく。一方で、ゲーム制作会社などのCG部門は充実し、独立系のCG会社はその業務を受託する立場になる。CGが普及すればするほど表現自体に新しいことを求めることが難しくなり、独自の作品にチャレンジすることも少なくなっている…
なぜ、こんな話をしたかというと、まさに現在のいわゆるWeb制作業界も同じ轍を、より早いスピードで通っているのではないか、と感じる面があるからだ。4,5年前までは特別な機会だけに限られていたリッチなインタラクティブ表現も、今ではFlashを用いるのは当然という認識になっている。そしてそれと平行する形で、3年くらい前までは独立系のWeb制作会社がその専門性で業界をひっぱっていたが、技術の普及と広告利用での需要の多さから最近では広告代理店や従来の大手広告制作会社の系列のWeb会社の規模が大きくなってきた。さらにそれと歩みを同じくするように、フリーランスや小規模チームが増えてきた。いろいろな見方があるかもしれないが、俯瞰してみると、Web制作業界全体のオペレート業務化、下請け化が一気に加速してきたように感じるのだ。
ボク自身は残念ながらクリエイターといわれるような才能を持ちあわせていないのだが、わざわざ会社をやっているからには、働いているスタッフにはひとりでは体験できないような大きなことにチャレンジしてもらいたいし、周りの人に自慢できるような仕事をしてもらいたい。それができる環境を作ることが経営者の責務だとも思っている。
ただ、最初にも述べたように、ボクにはまだ、会社だからこそたどり着けるwebクリエイティブの将来像がはっきりと見えていない。今、主流になっているプロダクト紹介メインのスペシャルサイトをつくるならフリーでも十分やっていける。今のところ、今までの実績や開発経験のアドバンテージで認めていただいているが、ただ流れに身をまかせていれば、その効果もあと数年で消えてしまうだろう。実際問題としても、数年前までは90%以上内製でやっていた仕事も、去年くらいから映像を使うなどよりリッチな表現が求められることが増え、外部のクリエイターに協力を依頼しない仕事の方が少なくなってきているし、その方向は今後も加速していくに違いない。
話をわかりやすくするためにも、このコーナーでは、実際にボクらにとっても業界にとっても最も制作機会の多い広告の話を基点に展開する予定だが、この領域でどこまでいけるかを語るということは、言い換えれば、Web制作オリエンテッドな会社が広告のプロ集団になれるのか? ということである。そしてそれは2つの側面から語ることができる。将来のWeb広告クリエイティブのカタチはどうなっていくのか、Webオリエンテッドな優秀なクリエイターが広告のプロになることを望むのか。
今回の連載をきっかけに、スタッフとともに弊社FACEsサイト(http://faces.jp/)上でも考察をはじめたいと思う。そしてそのダイジェストやトピック、番外編をこのコーナーで紹介していきたい。せっかくなので他業界の方の話も伺ってみたい。このコーナーが終わるまでに、どこまでたどり着けるかわからないが、Webクリエイティブの行方について改めて考えはじめたいと思う。
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Director's Magazine 2007年4・5月号「Webクリエイティブはどこまでいけるか」とほぼ同原稿だと思う。
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